シン・ゴジラと川崎の臨界実験装置

先週、朝日の『(核リポート)封印解いた河野太郎氏「東電は責任果たせ」』を読み、いまさらだが、シンゴジラが核施設に無関心だったことを思い出したので、事実を織り込みながら妄想を加速させてみた。

シンゴジラが生まれたのは東京湾とされているが、詳しくはアクアラインの川崎側海中だ。
世間ではあまり知られていないことだが、川崎市には研究用核施設が麻生区と川崎区のそれぞれ2カ所合計4施設にある(1ある、3あった)。

川崎区にあるものは、浮島町の東芝原子力技術研究所の「低濃縮ウラン軽水減速非均質型臨界実験装置(NCA)」と教育訓練用原子炉TTR-1(2001年廃炉)、麻生区のは武蔵工業大学(現東京都市大学)に、武蔵工業大炉MITRR(2003年廃炉)と日立教育訓練用原子炉HTR(2006年廃炉決定)。
それぞれ廃炉と言っても、放射性廃棄物の処理や、さらには一度事故を起こした施設は、簡単には更地にできないようだ。
川崎区の東芝周辺には神奈川県が設置した放射線モニタリングポストが5カ所あって、測定値をネットで公開している。

浮島町の臨界実験装置NCAから距離6~7Kmの海中でシンゴジラは出現した。
そして、(推測だが、)幼生シンゴジラは臨界実験装置NCA施設脇の多摩川を無関心に素通りして、羽田空港と境界海老取川を通り、呑川に入った。

ーーーシンゴジラが関心を示さない臨界実験装置NCAとは、どんなモノなのだろう(?)、私のほうが関心を持ってしまった。
東芝の説明では、「特徴: 出力が低く、冷却する必要がありません。 放射能が低く、燃料は手で扱えます。」
「・出力
最大熱出力は200Wで、研究用原子炉の中でも出力が大変低いものです。運転中も温度や圧力は上がらず、発電の装置もありません。出力が低いため、 運転中も温度の上昇は測れないほど小さく、冷却する必要がありません。燃料の崩壊熱はさらに低いので、使用した燃料はプールなどの水中で保管する必要はなく、燃料室に(空気中で)保管しています。」
「・燃料と放射能
燃料は棒状の形状で燃料棒と呼んでいます。実験を行う場合には必要な燃料棒を炉心タンク内に装荷し、一連の実験を終了するとまた燃料室に戻して保管します。出力が低いため燃料は減らず、繰り返して使用することができるので、使用済燃料は発生しません。 燃料の中で発生する核分裂生成物の量が少ないので、燃料からの放射線量が低く、燃料室と炉心タンク間で燃料を移送する際に、所員が燃料棒を直接、手で取扱うことができます。」 https://www3.toshiba.co.jp/power/pic/pdf/201606_nca_no2.pdf
NCAの最大出力は200Wだが、実際の運転は0.1W程度だという。起動から停止まで2時間程度。常温常圧での実験のため、ウランと水素の比率を高めるため、発泡スチロールが使われた。
ーーーこんなことで、本当に臨界を極小でコントロールできるのだろうか?

成長したシンゴジラも、幼生のときと同じで、臨界実験装置(NCA)にもウラン燃料にも無関心だった。
シンゴジラは、中原区武蔵小杉で自衛隊の猛攻撃をかわして、多摩川にかかる丸子橋を破壊して都内へ進行するのだが、武蔵小杉に出現する前、わずか数秒間だが、京浜運河に現れた。
今度こそ浮島のNCA破壊だと思いきや、東電川崎火力発電所の千鳥町を飛び越え、扇町の通常工場(昭和電工?)を潰しただけだった。

シンゴジラは、深海ザメの一種「ラブカ」に似た生物が海中投棄された放射性廃棄物を食べた結果変態したという出自を持ちながら、なぜ、ウラン燃料臨界実験装置(NCA)に気付かないのだろうか?
また、初代ゴジラ(1954年)が水爆実験の放射能の影響で誕生したという核に対する「種」の怨念を、シンゴジラは忘れてしまったのだろうか?

映画のパンフレットには、シンゴジラは「熱核エネルギー変換生体器官を内蔵する混合栄養生物」だと設定されていた。
ということは、シンゴジラは、一般的な原発のようなウランやプルトニウムの核分裂炉ではなく、トリチウム(三重水素)使用する熱核反応を利用した核融合炉を体内に内蔵する生物(?)らしい。
核融合炉と同じ働きをする「熱核エネルギー変換生体器官」は、地上の太陽と呼ばれる次世代のエネルギーで、原発の核分裂炉のような暴走の危険がなく、高レベルの放射性廃棄物も出さない。
「混合栄養生物」というのは、従来の原発が出す高レベル放射性廃棄物(それを食べて放射能を半減するとともにエネルギーを得る)と、生体核融合炉から得るエネルギーとの混合(?)。

シンゴジラは、川崎の核研究施設を無視したわけではなかった、あえて攻撃しなかったのだ。
小さな施設といえども、核施設を潰したら、日本が破滅することを知っていた。

まさか、東電の責任を追及するために出現したわけではないだろうが、シンゴジラは放射性物質を半減させる能力を持ち、「熱核エネルギー変換生体器官を内蔵する混合栄養生物」なら、殺すのではなく、生け捕りにすべきだったのだ。
巨大に変態する前の幼生シンゴジラのときに捕獲すべきだったのだ。
生きたまま捕獲して、シンゴジラの生命のメカニズムを解明すれば、現在私たちが抱えている核廃棄物や廃炉の課題と次世代のエネルギー問題などは、いっぺんに解決したかもしれないのだ。
シンゴジラは、自分自身の身体に、廃炉さらには核廃絶へのロードマップが書き込まれた、生物だったのだ。

東電の福島第一原発事故の事情説明文はこんな言葉で結ばれていた。
「 一日も早い福島の復興と再生を果たすために国が前面に出て、より高性能な放射性物質除去設備の開発、汚染水に含まれるトリチウムの分離や貯蔵、海洋放出などについて検討が行われています。」(東京電力)